CPRの隠れた害(2023年)
心肺蘇生法(CPR)は救命処置として広く知られているが、その成功率は低く、たとえ心拍が再開しても脳へのダメージや肋骨骨折などの深刻な合併症を伴うことが多い。本稿は、CPRがもたらす身体的・倫理的課題を掘り下げ、医療現場における「生存」の質と認識について再考を促す。
背景メモ
- CPR(心肺蘇生法)は心停止時に胸骨を強く圧迫する救命処置だが、成功率は低く(院外心停止で生存退院は1割程度)、仮に心拍が再開しても肋骨骨折(平均7〜8本)、内臓損傷、脳障害など重篤な後遺症を残すことが少なくない。
- 米国では「どんな場合でもCPRを行うべき」という暗黙の規範が強く、医療現場やメディア(ドラマでの成功描写)が非現実的な期待を生んでいる。実際には高齢者や重篤な持病がある患者へのCPRは医学的に無益な場合が多い。
- 近年、「危害を及ぼさない(primum non nocere)」という医学倫理の観点から、患者本人の価値観や事前指示(DNAR=心肺蘇生を行わない指示)を尊重し、無理な蘇生を控える「平和的終焉(peaceful end)」を重視する議論が広がっている。
- 著者は集中治療医であり、医療における死生観の変化について複数の著作がある。