人間とAIが「善」を選ぶ方法
AIが倫理的判断を下す仕組みと、人間の意思決定プロセスとの類似点を探る。本稿では、AIが「善」を選択する際の判断基準や課題を分析し、人間の倫理観とAIの道徳的意思決定の間に存在する共通点と相違点を明らかにする。
背景メモ
- 本稿は、ローマ教皇フランシスコが2024年6月発布した「インテグラ・エ・ヴェラ(Integra et Vera:全体にして真実)」と題する最新の教令を機に、AIの倫理的問題をカトリック自然法論の観点から論じるもの。著者のショーン・マクグラスは、アイルランド出身の哲学者でAI倫理を専門に扱う「エイモス・インスティテュート」所長。
- 教令は、AIを含む新技術が「人間の尊厳」や「共通善」に奉仕すべきだと強調。ただし単なる規制論ではなく、伝統的な自然法論(人間には善を認識し選択する能力が内在するという考え)に基づき、AIの判断と人間の判断の質的な差を問い直す哲学的枠組みを提供している。
- 背景として、2023年の「ローマAI倫理フレームワーク」や2024年G7広島合意など、バチカンがAI倫理の国際的な議論に積極的に関与してきた経緯がある。バチカンはマイクロソフト、IBMなどと協定を結び、「アルゴリズム的決定」に倫理的ガードレールを設けるよう呼びかけている。
- 本稿が特に注目するのは、AIが「善を選択する」と言えるかどうかの問題。機械学習はパターン認識と確率計算であって意図性(インテンショナリティ)を欠く。一方カトリック自然法論では、真の道徳的行為には「善を見極め、それを自由かつ意識的に選択する」理性と意志の働きが必要とされる — この差にAI倫理の核心がある。