パキスタンの太陽光発電の奇跡――いったいどうやって実現したのか?
パキスタンは驚異的なスピードで太陽光発電を導入し、電力不足や高騰する電気料金への対策として国民レベルでソーラーパネルが急拡大している。政府の政策や国際支援によらず、市民や企業が自発的に投資したこの「奇跡」の背景には、停電や化石燃料依存からの脱却という切実なニーズがあった。本記事は、その急速な普及の仕組みと教訓を探る。
背景メモ
Jan Rosenowは、エネルギー転換と気候政策を専門とする英ケンブリッジ大学の研究者で、電力市場改革の国際比較で知られる。本記事で彼が注目するのは、常識に反して、低所得国・不安定な電力網を抱えるパキスタンが太陽光発電で世界有数の導入率を達成した現象だ。背景として、パキスタンは長年、高価な化石燃料輸入と送電損失(盗電や系統老朽化)に悩まされ、一般家庭・企業にとり系統電力より屋根置きソーラーの方が経済的に合理的となる「グリッドパリティ」が早くから成立していた。政府は輸入太陽光パネルに無関税・無許可の事実上の自由市場状態を放置した——これは意図せざる政策だったが、結果として世界最速クラスの導入ペースを生んだ。同国は現在、ピーク時の太陽光発電が国内電力消費の3分の1超を供給するに至っている。その裏で、従来の電力会社は財政破綻に追い込まれ、系統の安定運用(需給バランス)に新たな課題が生じている。この事例は、需要家自身の経済行動が政策目標を超えて普及を加速させる力と、それに制度が追い付かない際のジレンマを示している。