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「二隻の船」が形作るアメリカ史観

アメリカ建国の起源を「メイフラワー号」と「奴隷船」という二隻の船に象徴される二つの異なる歴史的視点から読み解く論考。ピルグリム・ファーザーズが描く自由と民主主義の物語に対し、奴隷貿易がもたらした抑圧と不平等の歴史を対置させることで、アメリカという国の複層的なアイデンティティを浮き彫りにする。

背景メモ

- 本稿が取り上げる「2隻の船」とは、1620年にピルグリム・ファーザーズを運んだメイフラワー号と、1619年に最初の奴隷にされたアフリカ人をヴァージニアに運んだアンゴラ人の奴隷船を指す。米国建国神話では前者ばかりが象徴的に語られ、後者は長く忘却されてきた。 - 著者のクリント・スミスは、米国で最も注目される黒人知識人の一人。詩人でありハーヴァード大学教授でもあり、大統領就任式で自作詩を朗読したことでも知られる。 - 1619年プロジェクト(『ニューヨーク・タイムズ』が主導した、米国史の起点を奴隷制に再定位する試み)をめぐる政治的・学術的論争が背景にある。保守派は「祖国への憎悪を教える」と批判し、進歩派は「米国史を白人中心から脱却させる必要がある」と擁護する。 - 本稿は、奴隷船と巡礼船という二つの起源を並置することで、自由と抑圧の緊張関係こそが米国の核だと論じる。建国神話を否定するのでも美化するのでもない、第三の歴史観の提示を意図している。