人間なき未来
ニック・ランドの哲学「加速主義」の核心を探る批評的エッセイ。人間中心主義を解体し、技術的プロセスとしての思考を追求する彼の思想は、ポストヒューマンな未来像を描き出す。ランドは人間という枠組みを超越した「非人間的」な思考と、資本主義やテクノロジーの自律的加速がもたらす人類消滅後の世界を提唱する。
背景メモ
- 本稿で扱う「アクセラレーショニズム」は、資本主義やテクノロジーの発展を意図的に加速させることで既存の社会システムを崩壊させ、全く新しい何かを生み出そうとする思想。右派(資本主義の徹底)と左派(資本主義の打破)に大別される。
- ニック・ランド(Nick Land)はイギリスの哲学者で、1990年代に英ウォーリック大学で「サイバネティック文化研究ユニット(CCRU)」を主宰。ポスト構造主義(ドゥルーズ/ガタリ)、SF、コンピューター科学、オカルトなどを融合した独特の思想で知られる。2010年代以降、オンライン上の「暗黒啓蒙(Dark Enlightenment)」や「ネオリアクショナリー(NRx)」と呼ばれる反民主主義・反平等主義の潮流に強い影響を与えた。
- ランドは「人間は地球を覆う人工知能という“惑星規模の脳”へと溶解する」という終末論的な未来像を描く。人類の意思や道徳は無意味であり、テクノロジーと資本の自律的加速が人間のコントロールを超えて突き進む「人間以後(posthuman)」の世界が来ると主張する。
- アクセラレーショニズムは2010年代に欧米の批評理論やアート、ネットサブカルチャーで再流行。マーク・フィッシャーやレフ・マノビッチらを通じて左派的な再解釈も行われたが、ランド自身の立場は民主主義や社会的公正を否定する極右思想的側面を帯びており、論争の種となっている。