ジェームズ・G・バラード作『溺れゆく世界』における「ミザナビーム」[pdf]
本論文は、ジェームズ・G・バラードの小説『溺れゆく世界』において用いられる「ミザナビーム」(作品内に埋め込まれた自己言及的な鏡像構造)の技法を分析する。物語構造とテーマ的側面の両方から、この手法が作品全体の意味生成に果たす役割を考察する。
背景メモ
- J・G・バラード(1930-2009)はイギリスのSF作家。『沈んだ世界』(1962年)は、太陽フレアの増加によって地球の気温が急上昇し、海面が上昇してロンドンが熱帯のラグーンと化した近未来を描く初期代表作。
- "mise en abyme"(ミズ・アン・ナビーム)は文学・美術批評の用語で、作品内部に作品全体を縮小して映し出す「入れ子構造」(例:劇中劇、絵の中の絵)を指す。本稿はこの手法がバラード作品でどう機能しているかを分析している。
- バラードの「破滅もの(カタストロフィー)四部作」の第一作であり、後の『結晶世界』『炎の世界』などと同様、環境の崩壊と人間心理の退行を結びつけた点で画期的だった。
- 本論文が掲載された雑誌『Revista de Estudios Norteamericanos』は英米文学専門の査読付き学術誌。著者(R. M. Pérez Martínez)はスペインの文献学者。