ロシアの北極圏掘削計画、無尽蔵の石油理論を復活させる
ロシアが北極圏で超深度掘削を計画していることが、枯渇しない石油供給を示唆する「無限石油」論争を再燃させている。科学界で長く否定されてきたこの仮説が、エネルギー資源を巡る地政学的議論に新たな波紋を投げかけている。
背景メモ
ロシア国営石油会社ロスネフチが、北極圏で超高深度(深さ7km以上)の試掘を計画している。この計画は「アブニオティック石油」(非生物起源石油)理論、すなわち石油は生物の化石ではなく地球内部の無機物から生成され、枯渇しないという学説に基づいている。英米主流派の石油地質学ではこの理論は退けられており(石油は有機物が地中で熱分解してできるという「ケロジェン理論」が標準)、大半の科学者は疑似科学に近いと見なす。だがロシアでは同理論を自国に無尽蔵の資源がある証拠と位置づけ、20世紀から国策として研究・推進してきた経緯がある。今回の掘削は学術的検証という名目だが、実際にはウクライナ侵攻後の欧州向けエネルギー輸出減少を補い、新たな採掘権益を確保する狙いとされる。計画が成功すれば資源ナショナリズムとエネルギー地政学に大きな影響を与えるが、失敗すればさらなる国際的孤立を招くリスクもある。