パキスタンの太陽光発電の奇跡——いったいどうやって実現したのか?
本記事は、パキスタンが短期間で太陽光発電を急速に普及させた「奇跡」について分析する。規制緩和、輸入パネルの関税引き下げ、電力網の不安定性に起因する自家発電需要の高まりが相まって、世界でも類を見ない太陽光導入率を達成した。この成功の裏にある政策と市場要因を探る。
背景メモ
Jan Rosenowは欧州のエネルギー政策研究者(ケンブリッジ大客員研究員、エネルギー関連のシンクタンクRAP理事)で、世界各国の電力・ガス市場を専門とする。電力システムに詳しい人物がパキスタンの太陽光ブームに注目したのは、そこに「政策によらない」エネルギートランジションの前例があるからだ。
- パキスタンは2024年までに約25GWの太陽光パネルを輸入して設置。これは同国系統電力の総発電容量(約45GW)の半分超に相当し、しかも数年の間に起きた。
- 注目すべきは、国が補助金や固定価格買取制度(FIT)を導入したわけではないこと。設置を駆動したのは、世界最安値クラスまで下がった太陽光パネルの価格と、計量メーターを使った実質的なネットメータリング制度の存在。
- パキスタンの送電網は財政難で維持がままならず、停電が頻発。一般家庭も事業者も、グリッド電力の信頼性の低さとコスト高を受けて「自家発電」として屋根上太陽光にシフトした。
- ただし急増は系統安定に悪影響も及ぼしている。日中に太陽光が大量に流れ込むとベースロード電源(石炭など)の稼働率が急落し、グリッド運用が難しくなる。いわゆる「ダックカーブ」問題の極端な形がすでに現れている。
- パキスタンの事例は「政府の計画よりも技術の価格下落と消費者の合理的行動のほうがずっと速くエネルギー転換を進める」という教訓を示すが、同時に系統計画の欠如がもたらす課題も浮き彫りにしている。