グローバル公共財の多中心的な生産 [pdf]
本稿は、気候変動対策や感染症対策などのグローバル公共財の供給において、中央政府によるトップダウン型の統治ではなく、多様な主体が自律的に協調する「多中心的な(ポリセントリック)」アプローチが有効であると論じる。エリノア・オストロムらの制度分析を拡張し、分散的な意思決定と重層的なガバナンスが公共財の持続可能な生産を促進するメカニズムを明らかにする。
背景メモ
- 本稿は、気候変動対策や感染症対策といった「地球公共財」を、単一の国際機関(国連など)が中央集権的に提供するという従来のモデルに対し、国家・企業・NGO・地域コミュニティなど複数の主体が競合・協調しながら分散して供給する「多中心(ポリセントリック)」なアプローチが有効であると論じる。
- 著者のポール・グッドマンは、米国コロラド大学の政治学者で、ガバナンス理論と制度経済学の交差点で研究を行う。特に「公共財の自発的供給」をテーマとした実証・理論研究で知られる。
- 議論の背景には、従来の公共財理論(サミュエルソンらの「市場では過少供給になるため政府の強制が必要」とするモデル)への批判がある。グッドマンらは、オストロム(2009年ノーベル賞)の「コモンズのガバナンス」理論を国際レベルに拡張し、トップダウンの協定だけでなく、実験・試行錯誤・地域ごとの適応を通じたボトムアップの解決策の重要性を強調している。
- 本稿は、国際関係論や公共政策の専門家向けに書かれており、実例(地球観測衛星データの共有やワクチン開発の国際的協調など)を挙げながら、「誰がルールを作るのか」「失敗した時の責任は誰が取るのか」といったガバナンスの現実的な課題に踏み込んでいる。